オリジナル小説サイト「渇き」

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019/生きていること

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僕が初めて蛙を見たのは、車に轢き潰されたウシガエルだった。
薄く伸びたゴム風船のようだと思った。
口からはみでた赤黒いものが、かつてこれが生き物だったのだと表していた。
生きているのかどうか。生きていたのかどうか。その判断はむずかしいと幼い僕は思った。

その後、動物園で毒蛙たちをみた。
カラフルで、毒々しくて、人工物みたい。
きっと彼らも轢き潰されたら、生きていたのかどうか判断するのは難しいだろう。

人間は「生きていた」という記憶があるから、死体になっても「生きていた」と思ってもらえるのだろう。
記憶が誰かが持っているのならば。

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