オリジナル小説サイト「渇き」

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018/貧富

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自分の家が裕福であると気づいたのは、家そのもの、建物そのものが立派であることに気づいたからだった。
住宅街には僕の家と大差ない大きな家が並んでいた。同じ区画の同じ家ばかり。
けれどこの小さな世界ではスタンダードでも、一歩出たら違っていた。
 
親が病で生活保護を受けている家庭の友人がいた。
市営住宅だという彼女の家に遊びに行ったとき驚いた。
壁が、コンクリートブロックに壁紙が貼られただけだった。
玄関もなく、サッシから入るとすぐ小部屋に二段ベッドが置かれ、奥にもう一部屋と、どこにあるのかはわからないけれどキッチンとお風呂とトイレもあるはずだとは思った。
家といえば玄関があって、廊下の先に部屋があって、清潔な水回りと個人の部屋がある。
その常識が打ち砕かれた瞬間だった。
哀れだとは思わなかった。けれど、家はその家庭の貧富を表すのだと知った。
 
僕の家は立派だ。
そのことに感謝しなくてはならない。
同時に、いつまでもそこにいられるとは思ってはならない。
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