オリジナル小説サイト「渇き」

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011/桜グッズと僕の死

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 桜が散ると、僕は一度死んでしまったような気分になる。心の中が空っぽになって、その孔に桜吹雪が吹き抜けていくような悲しさがある。僕が「さくら」という名だからだろうか。
 本名は別に「さくら」ではない。かすりもしていない。人生で初めてチャットをしたときに使った名前が「桜井」で(このときは嵐のファンではなかった)、そこから「さくらちゃん」と呼ばれるようになった。
「さくらちゃん」だとあまりにも女の子らしい、と性別違和のあった僕はさくらを名字の「佐倉」にし、下に由来は語らないが「愛斗(まなと)」をつけた。
 
 そんな経緯でこの名前で活動しているが、そのせいか桜グッズには弱い。
 桜柄の文房具は集めてしまうし、桜の香りのハンドクリームを使い切れもしないのに買ってしまう。桜の香水だってもっていたこともある。
 けれどいつも、僕には似合わないなあ、って思ってしまう。
 春になると出る桜グッズたちに心躍っても、部屋は青が基調だし、可愛らしいものはあまり得意ではない。グッズになるとなんであんなに可愛らしくなってしまうのだろう。
 
 あれほど潔く散って死んでしまうさくらと、世間の桜グッズのギャップが大きいのだろうか。僕にとって桜は終わりの、死の象徴だ。
 桜が散らないと知らずに生きていたら、桜グッズも愛でることが出来たのかもしれない。
 
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