オリジナル小説サイト「渇き」

恋愛小説、純文学、エッセイを扱った小説家・佐倉愛斗オリジナルサイト

SS『騒音』

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 うるさい。

 この感情が僕の脳内で鳴り響いてたまらなかった。

 人の足音、冷蔵庫の待機音、本をめくる音、小鳥の囀り、キーボードを叩く音。

 試しに耳栓をしてみたけれど、血の巡る音が喧しくてたまらなくてすぐにやめた。

「何も聞こえなくなりたい」

 そう口にするのも煩くて僕は黙った。

 話しかけられても全て無視して、聞こえなかったことにした。

 

「ねぇ、私の話聞いてる?」

 聞いていない。

「あなたのためになりたいの」

 聞こえない。

「あなたが苦しいと私も苦しいの」

 うるさい。

 

 愛情って不思議よね。

 やっぱり一番大切なのは自分なの。

 苦しみを半分こなんていうけれど、その半分の苦しみから逃れたくて相手を責めるんだ。

 

 ああ、うるさい。

 誰も心臓を動かさないでくれないか?

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